見どころ

Highlight

展示構成

序章
埋忠の登場まで ―古刀から慶長新刀まで <大阪展のみ>

刀剣では慶長(1596~1614)時代以前のものを古刀と呼び、以後のものを新刀と呼びます。埋忠一門は新刀のさきがけといえる時期に登場します。本章では、埋忠一門が登場する前の時代の日本刀の流れを、各地域・時代を代表する名だたる刀剣により概観します。

国宝 太刀 銘 国行(明石国行)

国宝 太刀 銘 国行(明石国行)
刀剣博物館蔵

刀剣の主な制作地のひとつが、山城(京都)でした。鎌倉時代の同地の主な刀工の流派に(らい)と粟田口がありますが、この作品は来派の国行の作。反りの形が美しい、同工の代表作です。


Ⅰ章
刀工・(つば)工としての埋忠一門

古刀から新刀に至る変革期を支えたのが、京都で活動した埋忠一門でした。刀工・鐔工としての埋忠一門の特徴や作風変遷を紹介します。

〈1〉埋忠明寿の刀剣と鐔

埋忠明寿は埋忠一門を代表する刀工であると共に、独創的な鐔作品を残しました。明寿の刀剣は見事な刀身彫刻にみどころがあり、鐔は真鍮地や素銅(すあか)地に赤銅(しゃくどう)を象嵌した、鐔の概念を覆す枯淡な作風にその魅力があります。

〈2〉埋忠一門と刀身彫刻・鐔制作

埋忠明寿の刀身彫刻は国をまたいで弟子たちにも継承されました。特に肥前の地では刀身彫刻の伝統が長く継承されました。また江戸時代に入ると京を離れて他都市で活躍する門人も現れ、その作風は多様化しました。

重要文化財 短刀 銘 山城国西陣住人埋忠明寿 慶長十三年三月日/所持埋忠彦八郎重代

重要文化財 短刀 銘 山城国西陣住人埋忠明寿 慶長十三年三月日/所持埋忠彦八郎重代
個人蔵

明るい地鉄(じがね)の表裏に、大きな玉追い龍の刀身彫刻を施しています。彫刻の軽やかな仕上がりは、埋忠一門の技術力の高さを物語ります。40年ぶりの一般公開となります。


重要美術品 蔦文鐔 銘 埋忠明寿

重要美術品 蔦文鐔 銘 埋忠明寿
個人蔵

真鍮地に赤銅(または黒味銅(くろみどう))、銀、素銅で象嵌した鐔。金属を意図的に腐食させてにじんだ風合いを出し、絵画のたらしこみに似た表現を狙ったものです。

菊花透十二支図鐔 銘 山城国西陣住 埋忠七左衛門

菊花透十二支図鐔 銘 山城国西陣住 埋忠七左衛門
個人蔵

埋忠七左衛門は、埋忠一門の継承者のひとり。この作品は京都の埋忠家で仕立てられた作品ですが、洗練された作風への変化が、時代の変遷を物語っています。


Ⅱ章
埋忠一門の実像

埋忠一門の最大の特徴は、刀剣だけでなく鐔や(はばき)といった刀剣に関わる金具類も手がけたことにあります。また名刀の磨上(すりあ)げ(寸法を詰める)や、磨上げに伴う金象嵌銘(きんぞうがんめい)の嵌入を行いました。ここでは、埋忠一門の作業記録と考えられる刀剣博物館本『埋忠刀譜(埋忠銘鑑)』所載の名刀から、埋忠の実像に迫ります。

〈1〉『埋忠刀譜(埋忠銘鑑)』の世界

刀剣博物館本「埋忠刀譜」所載の名刀、すなわち埋忠一門が携わった名刀を紹介します。

〈2〉埋忠一門の鎺制作

埋忠一門は名刀の金具制作にも関わりました。金無垢で作られた埋忠の鎺は、数々の名刀を彩りました。

〈3〉本阿弥家と埋忠一門

埋忠一門が行っていた名刀の磨上げ等の作業は本阿弥家との関わりの中で行われました。

〈4〉埋忠一門と西国大名

埋忠一門は有力な大名家ともつながりを持っていました。黒田家と埋忠家が交わした書状や、毛利家と埋忠との関係を示す作品類も残されており、両家と埋忠家との信頼関係がうかがえます。

重要文化財 短刀 無銘 貞宗(名物 太鼓鐘貞宗)

重要文化財 短刀 無銘 貞宗(名物 太鼓鐘貞宗)
個人蔵

徳川家康、秀忠の手を経て、仙台の伊達家に贈られ、伊達家の重宝として伝来しました。「埋忠銘鑑」にもその特徴ある姿と彫物が写し描かれています。


埋忠刀譜

埋忠刀譜
刀剣博物館蔵

一般に「埋忠銘鑑」と呼ばれる作業記録。今回の展覧会に際しての研究で、同書が最もオリジナルに近いことが分かりました。


国宝 短刀 無銘 正宗(名物 九鬼正宗)

国宝 短刀 無銘 正宗(名物 九鬼正宗)
林原美術館蔵

九鬼長門守守隆が所持していたことが名物の由来。のち徳川家康から紀州徳川家、伊予西条松平家へと伝来した、名工・正宗の最高傑作のひとつです。付属する金無垢の鎺の台尻に「うめたゝ寿斎 彦一入」と銘が切られています。

重要美術品 刀 額銘 備中国住次直(金象嵌銘) 毛利元康所持/依此刀利埋忠磨上之(号朝霜)

重要美術品 刀 額銘 備中国住次直(金象嵌銘) 毛利元康所持/依此刀利埋忠磨上之(号朝霜)
個人蔵

南北朝時代の備中(岡山)の刀工、次直の作品であることを示す額銘(当初の銘を切り嵌めた銘)、埋忠が磨上げたという改変の経緯と毛利元康が所持したという所持者を伝える金象嵌銘が施された刀。金無垢の鎺には針書き銘で「うめたゝ明真」の銘があります。


本阿弥光悦筆消息 埋忠寿斎宛

本阿弥光悦筆消息 埋忠寿斎宛
個人蔵

埋忠寿斎(?~1646)からツツジの花と花切小刀を受け取った本阿弥光悦(1558~1637)からの御礼の手紙。光悦と埋忠家による風雅なやりとりが垣間見えます。

本阿弥家銅印

本阿弥家銅印
個人蔵

豊臣秀吉(1537~1598)から本阿弥光徳(1554~1619)に与えられ、本阿弥家の折紙(鑑定書)に捺されてきたと伝える印。印自体の資料的価値もさることながら、外箱は漆工家、池田泰真(1825~1903)の作で、明治15年という制作年代が分かる作品として、工芸史的にも貴重なものです。